春~夏の季節で、自然の多い地域で飼われている犬に発生するのがマダニの寄生です。マダニは、木や草の葉先に生息し、犬がそこを歩いた時に付着してしまいます。自然が多い場所でなくても都会の公園や道路沿いの新しい植え込みや芝生から犬に移るケースもあります。犬の被毛に付着したダニは皮膚の柔らかい部分を口吻してから差し込んで吸血します。犬の体表にアズキ大から大豆大の光沢のある赤黒い色をした虫が皮膚に、しっかりと食い込むように付着していたらマダニです。付着して血を吸ってない場合にも、2~3ミリのすばやく動く小さな虫ですが、血を吸って体を大きく膨らみます。
マダニは、目のふち、耳の付け根、頬、肩、前足に寄生することが多く、ときには、足の裏にも見つかります。普通は2~3匹の寄生ですが、ときには、1匹の犬に数十匹~数百匹も寄生していることがあります。少数のマダニが単に犬の血を吸うだけなら、それほど大きな害はない。問題は、犬の命にかかわる「バベシア」という病原体(原虫)を伝播することです。
バベシアは、マダニの吸血の際に犬の血管内に注入され、それが赤血球内に侵入し、さらにそこで細胞分裂によって増殖を繰り返し、赤血球を破壊。そして再び新たな赤血球に侵入して、その数を増やしていく。体じゅうの細胞に酸素を供給する役割を担う赤血球がどんどん壊されていけば、衰弱が進行して、ついには全身性の酸素不足状態からショック状態に陥り、一命を落としてしまう場合もあります。
治療方法は、犬の皮膚に1匹以上のマダニがみつかれば、マダニの寄生があると診断されます。マダニを取り除くには、ピンセットでゆっくりと引き抜きます。その際、ダニが食いついている根元からとってやらないと、ダニの頭部が皮膚に残ってしまいます。マダニの血液は人に対して危険な生物を含んでいる可能があるので、必ず手袋をして作業しましょう。マダニを取り除いたあとは、かまれた部位を消毒剤で拭きます。
マダニに大量に寄生されている場合や、繰り返し寄生を受けるケースでは、ダニ対策用の外用薬や寄生虫の感染を防ぐ薬剤、あるいは寄生虫を殺す抗生物質などを定期的に投与し、駆除と予防をおこないます。地域によって、赤血球に寄生する原虫(バベシア)や人間にも感染する病原菌の中間宿主となります。吸血してふくれたマダニを見つけてこれを除去する時、決してつぶさないようにしテッシュペーパーなどでしっかり包んでから処分して下さい。
※犬は生後5~7年で人間の「中年期」に入ります。 |