狂犬病は、哺乳類や鳥類などすべての恒温動物に感受性がありますが、特に犬を始め、キツネ、オオカミ等犬の仲間が感染しやすい、ウイルス性の病気です。この病気の恐ろしさは、症状の悲惨なこともさることながら、いったん発病すると、現在の医学でも治療方法はまったくなく、その死亡率が100%というところにあります。
症状は眼をつり上げて鋭い目に変化・牙をむき・見るからに狂暴な風貌と風体で檻(おり)の中をうろつき、棒でも金網でも、目の前にあるものなら何にでも噛みついてしまいます。WHO(世界保健機関)が狂犬病予防キャンペーンと海外旅行での感染防止の為にのために制作し、世界各地で上映しているフィルムに狂犬病にかかった犬の悲しい姿があります。その犬はやがて体がマヒし、ヨダレを大量に流しながらうずくまり、ついには死んでしまいます。
20世紀末の現在、狂犬病の発生していない地域は、日本では最近ほぼゼロに近いです。中国・インド・東南アジアをはじめとするアジア地域、アフリカ、南北アメリカやヨーロッパなど、地球上のほとんどの国々では毎年、家畜や野性動物、さらには人間に感染する症例がいくつもあります。
狂犬病ウイルスの主な感染事例は野性動物で、アメリカでは、スカンク・コウモリ・アライグマなどを中心に広がって、牛、犬、ネコ、人にまで及んでいます。ヨーロッパでは感染したキツネやオオカミから伝染するケースが、アフリカやアジア、ことに東南アジアやインド亜大陸周辺では犬の症例がきわだって高いです。人を含め、哺乳動物すべてがかかる死の伝染病が狂犬病なのです。
狂犬病が疑われた場合には、関係当局へ連絡の後、獣医師により安楽死が行われ、脳の検査で狂犬病であるかどうかの確定診断が行われます。人間への感染の危険性から治療の選択はありません。
予防方法は、幼犬時に狂犬病の動物に犬がかまれると、唾液に含まれるウイルスが傷口から体内に侵入し、脳や脊髄、眼球、神経などを蝕みます。そして1,2週間の潜伏期ののち、それこそ狂ったように、人でも犬でも物でも何にでもかみつく狂躁期に入ります。
そうなれば、誰でも狂犬病とわかりますが、厄介なのは、それ以前の潜伏期にも唾液にウイルスが混じっており、かみつかれれば感染してしまうことです。感染地帯では、犬にかまれれば、まずこの病気を疑わななくてはなりません。
疑いが晴れるのは、かんだ犬を隔離して10日たっても発症しないことが実証されたとき。それまで、人間にも予防ワクチンを毎日打ち続けて体内に免疫ができるのを待つだけです。毒ヘビのような血清はありません。
※犬は生後5~7年で人間の「中年期」に入ります。 |